2週連続で株価の上昇が止まった先週の米国市場を
「米国株式の割安割高を判断する目安」
になると思われる指標で概観してみます。
ごく簡単な先週の米国市場の概観
<先週のS&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
11.10の終値(2582)よりわずかばかり株価は下落し、2週間連続で上昇しませんでした。
といっても特に大きく下落しているわけでもありません。
日本株の大きなアップダウンとは全く異なる風景。
11.7の高値「2597」が今のところS&P500の最高値。
<先週の米国10年国債利回り>
米10年国債利回りは「2.4%」の壁を越えません。
2.3%台でうろうろ。
定点観測
以下の5つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
★マージンデット指数<マージンデット÷米国名目GDP×100>
恐怖指数
恐怖指数(VIX指数)とは
①S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティを元に算出される指数
②数値が高いほど投資家が相場の先行きに不透明感を持っているとされる
③1990年1月~2017年7月末の長期平均は「19.5」
④わたしは主に株式が割安な時期を示唆する指標と考えています(「30」以上で割安かも?)
⑤「10」程度で安定している時期は、投資家は安心・楽観・高揚していると考えられる
推移グラフと現在の状況判断
※出所:ヤフーファイナンスデータより管理者作成 ※期間:1990年1月~2017年7月末
上記は1990年からの長期推移のグラフです。
2017.11.17は「11.43」でした。下記グラフはここ3ヶ月の推移です。
※出所:恐怖指数(VIX 日経VI VSTOXX) 日経平均比較チャート
11月3日に過去最低の「9.14」を記録。
その後やや上昇していますが、せいぜい「13」程度の上昇。
長期平均に届かず依然として低水準です。
この指標からは、米国市場の投資家心理は安心、楽観モードと推測。
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
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ジャンク債スプレッド
ジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債の利回り-米国債(10年物)の利回り
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.1
★中央値:3.0
<期間:1996.12月~2017.9月の月末>
推移グラフと現在の状況判断
※出所:◎St. Louis Fed◎米国 10年 債券利回りのデータより管理者作成 ※期間:1996.12月末~2017.9月末
2017.11.16時点のジャンク債スプレッドは「2.0」で、11月9日の「2.0」と変わらず。
先々週スプレッドが拡大しましたが、先週は大きく変化なし。
水準としては割高圏の目安「2.0」程度で、長期平均の「3.1」よりはかなり低い値です。
恐怖指数と同様、投資家は安心モード。
単なる近年の経験則ですが、この指標からは株式は
「割高傾向?」
と推測。
※11.16時点のジャンク債利回り「4.39%」、米国債(10年物)の利回り「2.38%」
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
S&P500のPBR
S&P500のPBRとは
①PBRは株式の割安割高を判断する基本的な指標の一つです。1株当たりの純資産に対し、株価が何倍まで買われているかを表したのがPBR(株価純資産倍率)です
②PBRが小さいほど割安、大きいほど割高と判断します
③S&P500のPBRは米国市場の割安割高を判断する一つの目安であり、わたしは主に割安な時期を知る目安として参考にしています
推移グラフと現在の状況判断
※出所:S&P 500 Price to Book Value
上記グラフは1999年末~直近のS&P500のPBRのグラフです。
2017.11.17時点の推計値は「3.29」、11.10の「3.29」と変わりなし。
ITバブルの頃にははるかに及びませんが、サブプライムバブルの頃よりは大きな値です。
長期平均の「2.76」は上回っており、現在は少なくとも
割安な水準ではなさそう
です。
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
米国バフェット指標
米国バフェット指標とは
①米国バフェット指標=米国の時価総額÷米国の名目GDP
②米国株式の割安割高を判断する目安
③1995~2016年の各年末のデータから、
★平均値:1.23
★中央値:1.31
④近年の経験則の域を出ませんが
★1.05以下は株式は割安圏?
★1.40以上は株式は割高圏? と推測
推移グラフと現在の状況判断
※出所:グローバルノートのデータより管理者作成 ※期間:1995年末~2016年末
10月末のデータが確認できました。
米国の時価総額は2017.10月末で約「31.0兆ドル」(30.96兆ドル)。
2017年は3月に一度減少しましたが、他の月はすべて増加しています。
2017.10月末の米国バフェット指標は「1.60」であり、過去最高水準です。
割高圏の目安「1.4」を上回っているので、10月末時点では株式は割高圏?と推測。
※2017年米国名目GDP:19.36兆ドル(IMF推計)
米国バフェット指標について詳しくはコチラ↓
マージンデット指数
マージンデット指数とは
①「マージンデット÷米国名目GDP×100」で算出する指数
②米国株式の割安割高を判断するためにわたしが個人的に利用している指標
③1995.1月~2017.9月の各月末のデータから、
★平均値:1.73★中央値:1.69④近年の経験則の域を出ませんが
●「マージンデット指数 1.3以下」⇒株式は割安圏?
●「マージンデット指数 2.4以上」⇒株式は割高圏?
※マージンデットは一般的な指標ですが、「マージンデット指数」は一般的なものではありません
推移グラフと現在の状況判断
※出所:ニューヨーク証券取引所、世界経済のネタ帳のデータより管理者作成 ※期間1995.1月~2017.9月
10月のデータはまだ確認できません。
2017.9月末のマージンデット指数は「2.89」であり、過去最高の値です。
この指標の過去のピークは
・ITバブル:2.71(2000年)
・サブプライムバブル:2.63(2007年)
・2015年:2.80
でした。
今回はすでに「2.89」で記録更新中。
割高圏の目安「2.4」を上回っており、株式は割高圏?と推測。
※出所:ニューヨーク証券取引所、世界経済のネタ帳のデータより管理者作成
マージンデット指数について詳しくはコチラ↓
現時点での米国市場の割高割安、5つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安ではなさそう
★ジャンク債スプレッド⇒割高傾向?
★S&P500のPBR⇒割安ではなさそう
★米国バフェット指標 ⇒割高圏?
★マージンデット指数⇒割高圏?
総合的に判断すると、わたしは米国株式は「割高圏?」と推測します。
したがって、現時点での米国株の長期投資のタイミングとしては
◎資産配分において、株式の配分比率を減らす
◎資産配分において、現金の配分比率を増やす
◎長期投資を一時やめる
のに適す時期だと考えています。単なる経験則ですが。
※長期投資に関する一つの判断です。短期、中期的な投資には役立たない可能性が高いです
※基本的にできるだけ「割高な時期に株を売り、割安な時期に株を買う」という判断に基づいています
※単なる個人の感想です。未来は誰にも予知できません。投資は自己判断、自己責任で
ITバブル、サブプライムバブル、現在のデータ比較
※出所・世界のバフェット指標:GLOBAL NOTE、World Federation of Exchanges・OECD景気先行指数:OECD Data・シラーPER:Shiller PE Ratio
あとがき
今後の市場動向に対して強気派と弱気派の例を挙げてみます。
①日経平均30,000円への道。達成時期はいつ? | 最新情報 | マネックス証券
②カルパース:債券投資配分、最大44%に引き上げ検討-現在の2倍以上 - Bloomberg
①は強気派の一例です。
日経平均が3万円に届くという見込みに賛同する方々が「いつそれが達成されるか?」というテーマで様々な意見を述べておられます。
②は弱気派の一例です。
米国最大の年金基金、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)が債券への投資配分を2倍以上に増やし、株式への配分を3割程度下げることも検討している、という記事です。
具体的には、
・債券の割合:現在の19%⇒最大44%まで引き上げる
・株式の割合:現在の50%⇒最小で34%まで引き下げる
可能性がある、とのこと。
下記サイトによればカルパースのポートフォリオは平成29年3月末で
債券:株式:その他=20:54:26
だったようなので、これを今後
債券:株式:その他=44:34:22
に移行させる可能性もあるということのようです。
※海外の公的年金の運用状況はどのようになっていますか。(よくあるご質問) | 年金積立金管理運用独立行政法人
あくまで「可能性」の話なので、実際どうなるのかは不明ですが、場合によってはずいぶん思い切った配分変更を断行するようです。
これはカルパースの資産運用のスタイルが
ポートフォリオを大きくいじることもある一種のタイミング投資
の一面を有することを示唆する事実であり、個人的には、
・このような責任ある立場の組織が、将来の大きな機会損失をもたらし得る、大きな資産配分の変更を決断する場合(このまま世界的に株価が長期的に上昇を続ければ、債券への配分を大幅に増やす決断は大きな機会損失につながる可能性がありそう)
・どうような根拠、理由で、どうやって最終的な判断が下されるのか
気になります。
※どんな指標を根拠に今、株式への配分を減らすことが得策と判断しているのか?など
※カルパースの運用資産は2017年11月8日時点で3436億ドル(約39兆円)
とりあえず、「証券会社」と「公的年金基金」の判断、意見、スタンスが異なるのは当たり前ですが、立場や考え方により、様々な市場予測、市場対応があるようです。
関連記事です。投資スタイルとポートフォリオに関する記事です。