先週の米国市場を
「米国株式の割安割高を判断する目安」
になると思われる指標などで概観してみます。
ごく簡単な米国市場の概観
<先週のS&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
5.8は「2930」。前週末比「+3.5%」。
5月月間では今のところ「+0.6%」。
2020.2月の最高値「3394」から「-13.7%」の水準。
<先週の米国10年国債利回り>
5.8は「0.69%」。前週の「0.62%」から上昇。
定点観測
以下の4つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
恐怖指数
<1990年~>
<先週>
5.8は「27.98」。前週の「37.19」より大幅な低下。
長期的にはやや高水準ですが、だいぶ下がった印象。
水準としては長期平均(「19.3」)より高く、米国の市場心理は
やや不安?
と推測。
割安時期の目安の「30」以下。
※参考:2018年以降の高い値(場中含む。概算値)
・2018.2月:「50」
・2018.10月:「29」
・2018.12月:「36」
・2019.5月:「23」
・2019.8月:「25」
・2020.3月:「85」
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
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ジャンク債スプレッド
ジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債(格付け:BB)の利回り-米国債(10年物)の利回り
※本記事ではオプション調整後
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.3
★中央値:3.2
<期間:1997.1月~2020.4月の月末>
推移グラフと現在の状況判断
<1997年以降>
※出所:ICE BofAML US High Yield BB Option-Adjusted Spread (BAMLH0A1HYBB) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※期間:1997.1月末~2020.4.23
2020.5.7時点のジャンク債スプレッド(格付けBB、オプション調整後)は「5.37」で、前週の「5.39」よりやや低下。
スプレッドの長期平均は「3.3」で今は大幅に上回っており、投資家心理は不安?か。
<ここ1年>
※出所:ICE BofAML US High Yield BB Option-Adjusted Spread (BAMLH0A1HYBB) | FRED | St. Louis Fedより作成
●FRB、無制限の量的緩和(2020.3.23頃)
●FRB、ジャンク債(BB格まで)を購入(2020.4.9頃)
を契機に今のところBB格のスプレッド拡大は押さえ込めている印象。
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
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S&P500のPBR
※出所:S&P 500 Price to Book Value
1999年末~直近のS&P500のPBRの推移です。
5.8時点の推計値は「3.20」。前週の「3.10」より大幅上昇。
この期間の中央値「2.77」を15.5%ほど上回っており、現在株価は
やや割高
か。
※最近のS&P500の高PBR
①2018.1.26:3.60倍
②2018.9.21:3.51倍
③2020.1.17:3.76倍
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
米国バフェット指標
米国バフェット指標とは
①米国バフェット指標=米国の時価総額÷米国の名目GDP
②米国株式の割安割高を判断する目安
③米国の時価総額=NYSE+Nasdaqで計算
推移グラフと現在の状況判断
米国の時価総額は2020年1月末で約「36.7兆ドル」。
2020年1月末の米国バフェット指標は「1.64」。
今のS&P500は1月末より9%ほど低い水準。
長期の米国バフェット指標の中央値「1.33」より高い可能性が高く、株価水準は
やや割高?
か。
※2020年2~3月のWFEの米国時価総額データは誤りである可能性が高く、今は使用せず。2020年1月のデータからの適当な推測です。ご参考までに
※データ出所:https://www.world-exchanges.org/、世界経済のネタ帳のデータより作成
※2020年米国名目GDP:22.32兆ドル(IMF推計)
米国バフェット指標について詳しくはコチラ↓
現時点での米国市場の割高割安、4つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安時期ではなさそう
★ジャンク債スプレッド⇒割安時期の可能性
★S&P500のPBR⇒やや割高?
★米国バフェット指標 ⇒やや割高?
以上から米国株の水準は
ふつう~やや割高?(投資タイミングとして、ふつう~ややネガティブ?)
と推測。
また
★米国の金融政策:緩和的(ポジティブ要因?)
★米国の景気 :悪化傾向(ネガティブ要因?)
と推測。
株価水準、金融政策、景気動向から考え、現時点で米国株の投資タイミングに関して
株価水準としてはさほど魅力的ではなく、不確実性は高く、控えめなリスクテイクが無難か。
※個人の感想です。未来は誰にも予知できません。投資は自己判断、自己責任で
最近のバブル崩壊後の株価低迷期と現在のデータ比較
※表のデータ出所 ・世界のバフェット指標:GLOBAL NOTE、https://www.world-exchanges.org/ ・OECD景気先行指数:OECD Data ・シラーPER:Shiller PE Ratio ・失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg ・かい離率:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
先週はリスクオン。
・ジャンク債スプレッド:引き続き高値
・S&P500のPBR、シラーPER:割安感減退
・米国失業率:大きく上昇
・長短金利差:大きめに拡大
おわりに
<FRB総資産>
<ECB総資産>
※出所:Central Bank Assets for Euro Area (11-19 Countries) (ECBASSETSW) | FRED | St. Louis Fedより作成
2020年2月末~直近のFRB、ECB総資産の増加額
★FRB:2.56兆ドル(約273兆円)
★ECB:0.7兆ユーロ(約81兆円)
この期間日銀も約34兆円増加。
この3中銀だけでこの2ヶ月ほどの間で約388兆円の急増。
中銀が債券や株式を購入することで市場にマネー供給、市場を下支え。
ECBもFRBに続いてジャンク債(低格付け社債)を購入する?とのニュースも流れ出し、
FRB、ECBも今後株価低迷期が来れば、日銀のように株式ETF購入を開始する?
という想定もさほど不自然ではない状況か。
これは市場にとって大きなポジティブ要因。
一方、新型コロナ対策としてロックダウンや経済活動の制限が実施され、歴史的な不況の到来。
その影響もあって一部例外はあるものの(ナスダック総合など)、多くの株価指数は年初来ではマイナス圏。
緩和マネーの急増(+大規模な財政出動) vs 不況による企業利益の急減(懸念)、企業倒産懸念
のせめぎ合い。
結局相場の行方は今後のコロナ次第(第2波・3波が来るかどうか、消費行動や消費マインドに長期的な悪影響を及ぼすかどうかなど)?
コロナ次第?という点で、今回の事態は人間の制御能力(中銀や政府の対応力)を逸脱している可能性がないわけでもなく、普通の不況よりなおさら不確実性が高そう。
ポジティブにもネガティブにも振れ幅が大きそう。
とりあえず、S&P500のPBRやシラーPERはあと10%程度の株価上昇で「わりと割高?」な水準まで上昇してきている印象。
個人的にはポジションを抑え、やや下げ目線で対応。