先週の米国市場を株式の割安割高を判断する目安になると思われる指標などで概観してみます。
簡単な米国市場の概観
<S&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
直近値は「3840」で前週比「-0.1%」。
12月月間では「-5.9%」でした。
2022年1月の最高値「4819」より「-20.3」%水準。
<米国10年国債利回り>
直近値は「3.88%」。前週は「3.75%」で先週も上昇。
先週は
★株価⇒やや下落
★債券利回り⇒上昇
★ドル指数⇒低下
という動きでした。
定点観測
以下の4つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
恐怖指数
<ここ5年>
直近値は「21.67」。前週の「20.87」より上昇。
水準としては長期平均(「19.3」)よりやや高く、米国の市場心理は
ふつう~やや不安?
と推測。
※参考:2018年以降の高い値(場中含む。概算値)
・2018.2月:「50」
・2018.12月:「36」
・2020.3月:「85」
・2020.10月:「41」
・2022.1月:「39」
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
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ジャンク債スプレッド
本記事のジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債(格付け:BB)の利回り-米国債(10年物)の利回り
※本記事ではオプション調整後
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.30
★中央値:3.14
<期間:1997年1月~2022年11月の月末>
⑤5%以上のスプレッドの時期に株価は概ね割安か?
推移グラフと現在の状況判断
※出所:ICE BofAML US High Yield BB Option-Adjusted Spread (BAMLH0A1HYBB) | FRED | St. Louis Fed
※期間:1997.1月末~2022.12.29
12.29のジャンク債スプレッド(%。格付けBB、オプション調整後)は「3.12」で、前週の「2.97」より拡大。
スプレッドの長期中央値は「3.14」で今は中央値より約1%低い水準。
投資家心理は
ふつう
か。
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
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S&P500のPBR
※出所:S&P 500 Price to Book Value
1999年末~直近のS&P500のPBR推移。
直近の推計値は「3.83」(前週は「3.84」)倍で前週より低下。
長期の中央値「2.81」を36%ほど上回っており、株価水準は
割高
か。
※最近のS&P500の高PBR
①2018年1月:3.60倍(直近で世界景気がよかった時期)
②2018年9月:3.51倍(直近で米国の経済成長率が最も高かった時期)
③2020年1月:3.76倍(コロナ前、2019年9月以降の世界景気拡大期のピーク)
④2021年12月:4.73倍(コロナ後)
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
シラーPER
※出所:Shiller PE Ratioより作成 ※期間:1995.1~2022.11
1995年以降のシラーPERの推移。
1995年以降の中央値は「26.5」倍。
2022年11月までの5年移動平均は「31.2」倍。
直近値は約「28.1」倍で前週(28.1)と変わらず。
長期の中央値より約6%高く、5年移動平均より約10%低い水準。
株価水準は
やや割高?
と推測。
※出所:Shiller PE Ratio
※参考:シラーPER(CAPEレシオ)とは|金融経済用語集 - iFinance
現時点での米国市場の割高割安、4つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安ではない?
★ジャンク債スプレッド⇒ふつう?
★S&P500のPBR⇒割高?
☆シラーPER⇒やや割高?
長期的には米国株の水準は
やや割高?
と推測。
※個人の直感、感想です。先のことは不明。投資は自己判断、自己責任で
最近のバブル崩壊後の株価低迷期と現在のデータ比較
※表のデータ出所 ・OECD景気先行指数:OECD Data ・米国失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・マージンデット:Margin Statistics | FINRA.org ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg
・ジャンク債スプレッド:「ふつう」っぽい水準
・S&P500のPBR:割高か
・シラーPER:やや割高か
2018年との金利、物価、株価比較
前回FRBの「量的引き締め+利上げ」がセットで実施され、株式市場が大きく崩れ出したのが2018年10月頃。
当時と今の比較。()内は前週値。概算値。
利上げは7回、FRB量的引き締めは2022年6月に開始。
②は先週上昇、2018年より「0.8%」高い水準。
③は先週上昇、2018年より「1.5%」高い状態。
④は2018年より「4.6%」高い状態。
⑤は現状「-20%」水準。
※データ出所
●アメリカ 10年 債券利回り - Investing.com
●30-Year Fixed Rate Mortgage Average in the United States (MORTGAGE30US) | FRED | St. Louis Fed
●S&P500 インデックス(SPX) - Investing.com
金融ストレス指数(ここ1年)
※出所:St. Louis Fed Financial Stress Index (STLFSI4) | FRED | St. Louis Fed
2022.12.23は「0.08」(前週は0.10)で前週より低下。
11.4以降金融ストレス上昇トレンドでしたが12.9にとりあえずピークアウト。
※金融ストレス指数について
⇒金融ストレス指数とは|インデックス(指数)用語集|iFinance
おわりに
<S&P500:ここ1年>
※出所:マーケット|SBI証券
緑ラインは200日移動平均。
移動平均は下向きで、移動平均の下に位置。
2021年末⇒2022年末のデータ推移。
☆S&P500:4766⇒3840(-19.4%)
☆米10年債利回り:1.51%⇒3.88%(2.6倍)
☆実効FF金利:0.08%⇒4.33%(54倍)
☆ISM製造業景況指数:58.7⇒49.0(「49.0」は2022年11月のデータ)
2022年は金利が上がって景気が悪くなり株価も落ちた、といえそうなデータ。
2021年末、楽観に大きく偏っていたあの状況で1年後の
ISM⇒50割れ
長期金利⇒3.9%まで上昇
FF金利⇒4%超の利上げ
を予測できていて、それに合わせて適切なポジションを組んでいた人はごく少数派か。
年末年始はことさら「来年の、今年の予想」を立てる行動が活発になりますが、予測が当たらないのは普段と同様、年末年始になれば的中確率が上がるはずもなく。
区切りの時期において、何らかの「予想」を立てたくなる。
当たるから予想するのではなくわたしを含めて、人は「予想したい」から予想する、今はそんな風に感じます。
予想が当たれば楽しいですし、致命的なものでなければ、外れても楽しい場合もある。
全く興味を示さない人もいますが、一部の人にとって
「予想行動はある種の中毒性のある娯楽」
なのかもしれません。
過去100年以上、米国や世界全体の株式インデックスへの長期投資は物価上昇率を上回る高いリターンを実現してきたのは明白な事実である
といくら声高に主張したところで、この先数十年どうなるかなんて、誰にもわかるわけないんですから、比較的妥当性が高そうな株式インデックスへの長期投資にしても、それはやはり、一種の「予想」に基づいた「賭け」と個人的には感じる次第。
まして相場が数年にわたって大きく低迷した時期に、自分がどんな投資行動をとるかどうかを予想することは、よりいっそう困難な予想行動と思います。
苦境に陥ると一時的な苦しみから逃れるために、後々びっくりするような愚行を断行することがある
というのはわたしの経験則。