先週の米国市場を
「米国株式の割安割高を判断する目安」
になると思われる指標などで概観してみます。
ごく簡単な米国市場の概観
<先週のS&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
8.31は「2902」。前週比+0.9%。
7月末は「2816」なので、8月月間で+3.1%。
2018年4月以降5カ月連続のプラス、2018年3月末比で+9.9%。
高値は2018年8月の「2917」。
<先週の米国10年国債利回り>
8.31は「2.86%」。一瞬3%に届きそうになりましたが、引き続き2.8%台で推移。
昨年末は「2.41%」。
定点観測
以下の4つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
恐怖指数
<ここ半年>
<今週>
2018.8.31は「12.86」。前週の「11.99」より上昇していますが落ち着いた水準。
長期平均(「19.4」)より大幅に低く、米国の市場心理は
安心?
と推測。
5月以降、長期平均に1度も届かない状態。
目安の「30」以下であり、割安な状況ではなさそうです。
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
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ジャンク債スプレッド
ジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債の利回り-米国債(10年物)の利回り
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.0
★中央値:3.0
<期間:1996.12月~2018.7月の月末>
推移グラフと現在の状況判断
※出所:◎St. Louis Fed◎米国 10年 債券利回りのデータより管理者作成 ※期間:1996.12月末~2018.6月末
2018.8.30時点のジャンク債スプレッドは「2.2」で、前週の「2.2」と変わらず。
※ジャンク債利回り「5.04%」、米国債(10年物)の利回り「2.86%」
最近このスプレッドは動きが乏しいです。
長期平均は「3.0」であり、単なる近年の経験則ですが、この指標からは株式は
「やや割高傾向?」
と推測。
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
S&P500のPBR
※出所:S&P 500 Price to Book Value
1999年末~直近のS&P500のPBRの推移です。
2018.8.31時点の推計値は「3.48」。前週の「3.45」から上昇。
ITバブルの頃のピーク(5.06)にははるかに及びませんが、サブプライムバブルの頃のピーク(2.91)との差が大きくなってきています。
長期平均の「2.78」は上回っており、現在は少なくとも
割安な水準ではなさそう
です。
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
米国バフェット指標
米国バフェット指標とは
①米国バフェット指標=米国の時価総額÷米国の名目GDP
②米国株式の割安割高を判断する目安
③1995~2017年の各年末のデータから、
★平均値:1.25
★中央値:1.32
④近年の経験則の域を出ませんが
★1.05以下は株式は割安圏?
★1.40以上は株式は割高圏? と推測⑤米国の時価総額=NYSE+Nasdaqで計算
推移グラフと現在の状況判断
米国の時価総額は2018年7月末で約「35.2兆ドル」(6月末は「34.2兆ドル」。浮動株調整行わず)。
2018年7月末の米国バフェット指標は「1.72」(6月末は「1.68」)。
現在、割高圏の目安「1.4」を上回っていると推測され、現在の米国株式は
割高圏?
と推測。
※2018年米国名目GDP:20.41兆ドル(IMF推計)。2017年は19.39兆ドル
米国バフェット指標について詳しくはコチラ↓
現時点での米国市場の割高割安、4つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安ではなさそう
★ジャンク債スプレッド⇒やや割高傾向?
★S&P500のPBR⇒割安ではなさそう
★米国バフェット指標 ⇒割高圏?
総合的に判断すると、わたしは米国株式は「割高圏?」と推測します。
現時点での米国株の長期投資のタイミングとしては
①リスク資産の資産配分が大きくなりすぎていれば、所定の配分に戻す
②資産配分において、株式の配分比率を減らす
③資産配分において、現金の配分比率を増やす
④長期投資を一時やめる(投資をやめる機会を探している場合)
のに適す時期だと考えています。単なる経験則ですが。
※概ね10年以上を想定した長期投資に関する一つの判断です。短期、中期的な投資には役立たない可能性が高いです
※基本的にできるだけ「割高な時期に株を売り、割安な時期に株を買う」という判断に基づいています
※単なる個人の感想です。未来は誰にも予知できません。投資は自己判断、自己責任で
ITバブル、サブプライムバブル、現在のデータ比較
※表のデータ出所 ・世界のバフェット指標:GLOBAL NOTE、World Federation of Exchanges・OECD景気先行指数:OECD Data ・シラーPER:Shiller PE Ratio ・失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg
●長短金利差が少し拡大
●実質経済成長率の修正値:2018.2Q「+2.9%」と好調。
あとがき
上記記事より引用。
インドはGDPの規模でことしフランスを抜いて世界6位となり、このまま順調に成長を続ければ近くイギリスを抜いて5位になる見通し
上記記事より引用。
欧州委員会が30日発表した8月のユーロ圏景況感指数は111.6で、7月の112.1から低下した。昨年12月に115.2のピークを付けた後、8カ月連続で低下
米国やインドは好景気。欧州景気はさえない状況。
<インド、米国株価指数:ここ1年>
<ドイツ・フランスと米国の株価指数比較:ここ1年>
※出所:マーケット|SBI証券
当たり前ですがある国の
●景気がいい⇒企業利益が上がりやすい⇒その国の株価は上がりやすい
●景気がさえない⇒企業利益が上がりにくい⇒その国の株価は上がりにくい
傾向はあると思います。
超短期の投資スパンでは役立ちませんが、それなりの期間投資をする上で、景気動向は羅針盤的な存在になる可能性があると思われます。
結果論ですが、2018年、
●景気拡大傾向の米国の株価指数⇒買い
●景気がパッとしない日本や欧州の株価指数⇒売り
というロングショートはうまい方法だったかも。
高くて買いにくいけど好景気な米国市場を買うたならば、景気のさえない日本や欧州を保険的に売っておく、という発想(もし大きな下げが来ても日本や欧州も大きく下げるだろうから、致命傷にはならない、だろう)。
特に欧州市場は景気がさえない中で中銀(ECB)の金融政策がやや引き締め的だったので、「売り建てる」という意味では日本より安心感(暴騰しなさそう、という意味で)があったかも。
わたしは日本の個別株がメインでこの分野はまだ不慣れ、実験的にしか行っていませんが、研究してみるのは面白いテーマとは思います。
※個人の感想です。いつ景気が反転するかわかりませんし、今後これまでのようにうまくいくかは不明です。不測の事態で損失を出すことも。投資は自己責任で
※「純粋な長期投資」という観点では「高くて買いにくい」と感じるものをわざわざ買う必要もない、と思います。上記はロングショート戦略の一つのアイデアです
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●4位のドイツとはまだ少し距離がありますね