濃密だったここ半年を振り返る記事。
景気
個人的に重視している世界全体の景気指標、グローバル製造業PMIは
☆2021.12:54.3
☆2022.5(最新値):52.4
と1.9ポイント低下し、景気に減速感。
2022年6月の欧米の製造業PMIの速報値は大幅に低下しており(米国は5月の「57.0」⇒「52.4」、ユーロ圏は5月の「54.6」⇒「52.0」)、5月「52.4」だったグローバル製造業PMIも6月に低下する可能性大。
※50を下回ると景気減速
また、景気指標CLI(OECD全体)も2022年5月に節目の100を下回り、わずかに景気減速を示唆。
※出所:Leading indicators - Composite leading indicator (CLI) - OECD Datawww.yukimatu-value.com
2月の上記記事で
2022年の世界景気と株価に関しては今後
☆CLIやPMIの低下トレンドが継続する
☆CLIが100を、PMIが50を下回って景気減速感が鮮明になる
なら株価は軟調になりやすい?
と推測。
としていましたが、現状「CLIやPMIの低下トレンドが継続」し、CLIが100を下回り、PMIも50を下回りそうな雰囲気もあり、世界景気的には株式市場にとってかなりネガティブな状況と推測。
わたしは経済に関してど素人ですが、素人くさくごく単純に見つめれば、
☆物価上昇、金利上昇によって経済活動が阻害され、景気が悪化してる?
のではないかと。
中銀スタンス(金利)
日本、中国以外の主要国は物価上昇もあって基本的に金融引き締めスタンスが鮮明。
10年債利回りのここ半年の上昇率はざっと
☆米国:+1.6%
☆ドイツ:+1.7%
☆イギリス:+1.4%
☆イタリア:+2.4%
となっており、半年でこの動きは急激な上昇。
年初は利上げなんていってなかったECBも利上げモードになるもよう。
株式市場にとってかなりネガティブな状況と推測。
2月の上記記事では
場合によっては
利上げせずに経済を優先するか、利上げして物価抑制を優先するか
で難しい判断を迫られる中銀が増加するかも。
としていましたが、今、経済か物価、どちらをとるかで悩む中銀は多そう。
投資家のリスク許容度
日本の信用買い残はここ半年でおよそ「3.4兆円」⇒「3.1兆円」に減少。
米国のマージンデットは2021.12月の約「9100億ドル」から2022.5月には「7500億ドル」まで減少。
マージンデットの前年同月比でみると
☆2021.12月:+17.0%
☆2022.5月:-12.6%
であり、前年比でみてもここ半年ほど、マージンデットが減り続けている状況が鮮明。
個人的には信用買い残やマージンデットの動向は投資家のリスク許容度を反映していると考えており、今、米国の投資家のリスク許容度は急速に低下している可能性があり、株式市場にとってかなりネガティブな状況と推測。
3月の上記記事には
もちろんマージンデット、信用買い残、株価などが今後どうなるか、先のことは全く不明ですが、経験的、長期的には今は投資家のリスク許容度が急低下している時期に当たる可能性があり、
☆2022年、マージンデットや信用買い残の減少傾向が続き
☆マージンデットが前年比でマイナス幅を拡大していく状況が続く
ようなら、ごく控えめなリスクテイクが無難と思われる状況。
そして万が一マージンデットが前年同月比で-40%レベルのまれにみるリスクオフの事態に直面するようなら、それは滅多にない買い出動のチャンスかもしれず、インフレ動向を含め、今年は例年以上に目が離せない展開。
※出所:Margin Statistics | FINRA.org、S&P500 過去のレート - Investing.comより作成
と書いており、2022.5月のマージンデットの前年同月比が「-12.6%」であるところをみると、ほんとに「-40%レベル」がきてもおかしくない減りっぷり。
消費者物価
今や諸悪の根源ともいえそうな米国消費者物価(前年同月比)
☆2021.12月:+7.0%
☆2022.5月:+8.6%
この5ヶ月で1.6ポイント上昇。
昨年12月時点ですでに7%なので、決してロシアの動向だけが物価上昇の原因でないことははっきりしていますが、ロシアウクライナがらみのコモディティ価格上昇が今の高インフレの一因となっていることも明らか。
また上記記事でCRB指数と米国消費者物価についてふれていますが、CRB指数の前年同月比は
☆2021.12月:+38.5%
☆2022.6月:+40.4%
となっており、CRB指数の上昇は6月にやや収まってきているものの、依然高水準にあるのは明白。
※出所:TR/CC CRB インデックス(TRCCRB) - Investing.com、Consumer Price Index: All Items for the United States (USACPIALLMINMEI) | FRED | St. Louis Fedより作成 ※1995.2~2022.5 ※消費者物価は2022.4まで
さらに、米国消費者物価指数に大きな影響を及ぼす住宅価格も2022.4月データで
+21.2%(前年同月比)
と2004~2005年の住宅バブル期を上回る水準。
※出所:S&P/Case-Shiller 20-City Composite Home Price Index (SPCS20RSA) | FRED | St. Louis Fed
Inflation Nowcasting: Latest Data
上記サイトによれば6/29時点で2022.6月の米国消費者物価上昇率は8.67%、約8.7%と予想されており、「利上げによって急速に物価抑制が達成される」という期待はまだ望み薄か。
まとめ
今年は2018年以来の
●世界景気悪化
●FRB金融引き締め
●マージンデット、信用買い残減少
が同時に起きている状況であり、それも
●ITバブル以来の株価割高水準(S&P500のPBRやシラーPERでみれば)からの下げ相場スタート
という状況で、加えて
米国で40年ぶりの高インフレが生じ
40年ぶりに欧米主要中銀が経済か物価かで悩む事態。
この半年は歴史に残る
想定以上に投資環境が悪化した「濃密な180日」
だったかもしれません。
今後、意外に何らかの原因でするするっと物価が下がって景気減速も軽症、株価も大した下落にならないかもしれませんが、個人的には長期投資面ではキャッシュ比率を高め、
もしも「滅多にない買い出動のチャンス」が来た時の準備(何を、どのくらいの資産配分で、どのくらいのスピードで買うのか)
を怠らず、引き続きロングショートメインでちまちまと生き延びようと感じる次第。