先週の米国市場を
「米国株式の割安割高を判断する目安」
になると思われる指標などで概観してみます。
ごく簡単な米国市場の概観
<先週のS&P500>
※出所:米S&P 500インデックス(SPX - Investing.com
12.21は「2417」。前週比−7.0%の下落。
一週間で7%、驚きですね。
11月末は「2760」だったので、12月は現時点で−12.4%と大幅な下落。
今年の月間での最大下落率は10月の−6.9%でしたが、今のところ、12月が最大の下げ幅。
最高値は2018年9月の「2941」で今は高値から「-17.8%」の水準。
最高値はずいぶん遠くなりました。
<先週の米国10年国債利回り>
12.21は「2.79%」。
先々週末は「2.90%」だったので、週間で利回りは大きく低下。
「株安+利回り低下(債券高)」の傾向はありそう。
昨年末は「2.41%」で今年は約「0.4%」高い水準。
定点観測
以下の4つで定点観測してみます。
★恐怖指数<米国市場。S&P500の変動性>
★ジャンク債スプレッド<米国市場。クレジットスプレッドの一つ>
★S&P500のPBR<米国の代表的な株価指数のPBR>
★米国バフェット指標 <米国の時価総額÷米国の名目GDP>
恐怖指数
<ここ半年>
<先週>
12.21は「30.11」。前週の「21.63」より大幅に上昇。
2月は一気に50程度まで急騰しましたが、12月はじわじわ上げてきています。
水準としては長期平均(「19.3」)より大幅に高く、米国の市場心理は
不安、恐怖状態?
と推測。
目安の「30」以上であり、この指標のみで考えると株価が割安な状況かもしれません。
2018年2月以来の投資家の「ビビり度合い」といえそう。
※出所:S&P 500 VIXインデックスより作成
<恐怖指数について詳しくはコチラ↓>
www.yukimatu-value.com
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ジャンク債スプレッド
ジャンク債スプレッドとは
①ジャンク債スプレッド
=米国のハイ・イールド債の利回り-米国債(10年物)の利回り
②ジャンク債スプレッドが大きい⇒株式は割安傾向
③ジャンク債スプレッドが小さい⇒株式は割高傾向
④★平均値(幾何平均):3.0
★中央値:3.0
<期間:1996.12月~2018.11月の月末>
推移グラフと現在の状況判断
※出所:◎St. Louis Fed◎米国 10年 債券利回りのデータより管理者作成 ※期間:1996.12月末~2018.6月末
12.20時点のジャンク債スプレッドは「3.3」で、前週の「2.8」より大幅に拡大。
相対的には
「リスクの大きいジャンク債からマネーが逃避。リスクの低い米国債に流入?」
という事態が推測される状況。
債券投資家もビビってるといえそうな大きな変動。
※ジャンク債利回り「6.11%」、米国債(10年物)の利回り「2.81%」
長期平均「3.0」を一気に突き抜け、投資家心理は
ふつう~やや不安?
と推測。
<最近の推移>
※出所:◎St. Louis Fed◎米国 10年 債券利回りのデータより管理者作成 ※期間:2016.1月~2018.12月(12月は20日のデータ)
<ジャンク債スプレッドについて詳しくはコチラ↓>
S&P500のPBR
※出所:S&P 500 Price to Book Value
1999年末~直近のS&P500のPBRの推移です。
12.21時点の推計値は「2.89」。前週の「3.11」から激しく低下。
水準としては
★ITバブルの頃のピーク(5.06)
★サブプライムバブルの頃のピーク(2.91)
を下回る水準。
長期平均の「2.79」は上回っており、現在は
割安な水準ではなさそう
です。
※出所:S&P 500 Price to Book Value
<S&P500のPBRについて詳しくはコチラ↓>
米国バフェット指標
米国バフェット指標とは
①米国バフェット指標=米国の時価総額÷米国の名目GDP
②米国株式の割安割高を判断する目安
③1995~2017年の各年末のデータから、
★平均値:1.25
★中央値:1.32
④近年の経験則の域を出ませんが
★1.05以下は株式は割安圏?
★1.40以上は株式は割高圏? と推測⑤米国の時価総額=NYSE+Nasdaqで計算
推移グラフと現在の状況判断
米国の時価総額は2018年11月末で約「33.8兆ドル」(前月末は「33.4兆ドル」)。
前月より微増。
2018年11月末の米国バフェット指標は「1.65」(前月末は「1.64」)。
2017年末のバフェット指標は「1.66」だったので、今年は11ヶ月経過時点でわずかに数値が低下。
現在、割高圏の目安「1.4」を上回っていると推測され、11月末時点の米国株式は
割高圏?
と推測。
12月の様子をみると、2018年末は2017年末の数値を大きく下回ることになりそう。
直近米国時価総額のピークは2018年8~9月頃となるか。
※データ出所:https://www.world-exchanges.org/、世界経済のネタ帳のデータより作成
※2018年米国名目GDP:20.41兆ドル(IMF推計)。2017年は19.39兆ドル
米国バフェット指標について詳しくはコチラ↓
現時点での米国市場の割高割安、4つの指標からの推測、まとめ
あくまで経験的な判断ですが、現時点で各指標が示唆する株式の割安、割高の判断をまとめます。
★恐怖指数⇒割安の可能性あり
★ジャンク債スプレッド⇒ふつう~やや割安?
★S&P500のPBR⇒割安ではなさそう
★米国バフェット指標 ⇒割高圏?
総合的に判断すると、わたしは米国株式は
ふつう~やや割高傾向?
と推測。
恐怖指数やジャンク債スプレッドは割安傾向にぶれていますが、PBRやバフェット指標はまだ割安っぽくないので。
現時点での米国株の長期投資のタイミングとしては
①リスク資産の資産配分が大きくなりすぎていれば、所定の配分に戻す
②資産配分において、株式の配分比率を減らす
③資産配分において、現金の配分比率を増やす
④長期投資を一時やめる(投資をやめる機会を探している場合)
のに適す時期だと考えています。単なる経験則ですが。
※概ね10年以上を想定した長期投資に関する一つの判断です。短期、中期的な投資には役立たない可能性が高いです
※基本的にできるだけ「割高な時期に株を売り、割安な時期に株を買う」という判断に基づいています
※単なる個人の感想です。未来は誰にも予知できません。投資は自己判断、自己責任で
ITバブル、サブプライムバブル、現在のデータ比較
※表のデータ出所 ・世界のバフェット指標:GLOBAL NOTE、https://www.world-exchanges.org/ ・OECD景気先行指数:OECD Data ・シラーPER:Shiller PE Ratio ・失業率:US Unemployment Rate ・実質経済成長率:BEA National Economic Accounts ・長短金利差:米国債・金利 - Bloomberg
先週の大幅下落を受け
「ジャンク債スプレッド」「S&P500のPBR」「S&P500のCAPEレシオ」
の3指標で2007年サブプライムバブルの頃の割高感を下回りました。
先週の記事で
世界のバフェット指標やOECD景気先行指数からは
世界的な過熱相場のピークは過ぎた?
という印象を受けますが、現段階でも米国株の割高感はまだまだ意識される水準?と推測。
と書いていましたが、わずか一週間で米国の割高感はそれなりには減退しました。
割安な水準には遠いと思われますが。
★先週の記事
CAPEレシオ:2007年の水準に近づく ~米国市場の概況~
あとがき
景気が循環的なら、いつかはわからないけど、景気後退は来る。
それは誰かの責任というより、経済活動とはそういうもの、と捉えるくらいでいいのではないかと個人的には思っています。
むしろ景気後退が来たときに
●いかにして苦しい事態をできるだけ無難に収束させるか
●いかにして国民の不安をうまく取り除くことができるか
そういうところに責任ある立場の人達の資質が問われると考えますが、どうなっていくでしょうか。
今年もあと一週間、とんだ年末になっています。
先週の動きで米国の割高感はそれなりには減退しました。
今後
★「恐怖指数の上昇」や「米国社債-米国債のスプレッド拡大」はおさまり、株価が急反発するのか
★年末まで混乱が続くのか
S&P500の移動平均とのかい離も大きくなっており、米国景気も露骨に悪くなっていないので、普通に考えればこの一方的な流れはいったん収まり”一時的なパニック”となりそうですが、12月にここまで荒れるのも歴史的なことのようで、経験則というのも所詮経験則。
何が起きるかわかりません。
中長期的には安全第一、視点を変えて、景気拡大局面でがっちり稼げるときが来るのを気長に待ってもいいような気がする乱暴な相場。
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